ウミガメの反乱 前編
徒然文学館 #2
漠然マイスターたちが密かにハマっている「カタルタ」。
これを使って、収録中に即興で紡いで誕生した物語を紹介!
今回は「カタルタに遊ばれる大人たち ~世界はウミガメに吹き飛ばされる~ 漠然#39」でハマナカ、どてらい、さかまさみが紡いだ物語「ウミガメの反乱 前編」をお届けします。
カタルタとは
接続詞や副詞が書かれたカードをめくりながら、出た言葉に合わせて会話を紡いでいくカードゲーム。
今回は、ハマナカ、どてらい、さかまさみの3人がカタルタを使って即興ストーリーテリングに挑戦!
本記事の本編。太字で書かれた部分がカタルタに記された言葉を指しています。
音声はこちら!
聴きながら読むと、とても面白いですよ~!
あらすじ
窓も出口もない、真っ白な部屋に閉じ込められた「俺」。
美術館のような、忍者屋敷のような、モダニズム建築のような謎の空間で、彼は三年間ひたすら壁を押し続ける。しかし何も起こらない。ようやく「押すのではなく、引くのではないか」と気づいた瞬間、天井から落ちてきたのは、くのいちのような何かだった。
そこから物語は、閉ざされた部屋、大海原の孤島、ウミガメとしての百年、缶切りで開けるはずの箱、仮想世界、そして受験勉強へと転がり続ける。
天使と悪魔に挟まれながら、なぜか現れた“中央の人”。彼は弟なのか、導き手なのか、それともウミガメだった前世と今をつなぐ存在なのか。
勉強をしろと迫る母の声。消えた中庸の人。背後に現れるウミガメ。そして、夕食が冷める前に帰りを待つ母。
これは、閉ざされた部屋から始まり、人生の選択、前世、受験、家族、そしてウミガメへと至る、あまりにも壮大で、あまりにも勉強が始まらない物語の前編である。
語り部:ハマナカ、どてらい、さかまさみ
編集:どてらい
挿絵:ハマナカ
本編
どうやら、俺は閉ざされた部屋に閉じ込められているようだ。
どうやら、俺は閉ざされた部屋に閉じ込められているようだ。
特に、この部屋に違和感を感じるのは、窓など何一つないということだ。
なるほど、言ってみれば、ここは美術館の中のような、真っ白い壁だけの空間だった。
せっかくだから、壁を四方八方から押して、引いてみよう。何か見つかるかもしれない。
もし、押して壁がひっくり返るようなことがあれば、ここは忍者屋敷なのではないだろうか。
しかも、その忍者屋敷は、モダニズム建築みたいな。
なんとも装飾が削がれた、よくわからない建築物になるだろう。
なぜなら、装飾を削られたということはシンプルであるということだから。
故に、この建築物は、おそらく作った人間が「あんまり手を加えたくないな。めんどくさいな」という、ちょっとめんどくさがりなやつが作ったんだろうな、と私は思った。つまり、そこまで凝ってはいないから、脱出口はきっと、目の前の何でもないところにあるんじゃないかな、と思っている。
つまり、ここを押したら……。
毎日、そうやって押していく。しかし何も起こらない。
結局、俺はここから3年間出ることができなかった。毎日押していたのは、全然無駄だったんじゃないだろうか。
そして、ついにこの日が来た。
だから、私は考え方を改めてみた。押すんではなく、引いてみるんだ。
そして、引いてみた。思い切り引いてみたら、天井からボトッと何かが落ちてきた。あいつは、くのいち!
本当は、それはくのいちではなかったのかもしれず、僕の願望だったのかもしれない
なんだか、今までが全て夢のように思える。3年経ったような気がしたが、それはもしかしたら10分だったのかもしれない。この閉ざされた空間で、時間感覚が狂っているのだ。
だから、もう一回寝てみよう。寝て起きたら何か変わるかもしれない。
俺は寝て起きた。目覚めた。
するとそこは大海原の、ある島の上だった。
100年経って、僕はあの閉ざされた部屋のことを再び思い出した。
まるで、自分は人間じゃないかのように思える。
なぜ3年も食べ物を食べずに生きていられたのか。100年経ってもなぜ私はさっきと同じ姿のままなのか。
どんどん自分の体の垢が落ちていくような気がする。
そう、私は今、シャワーを浴びている。
垢が落ちて落ちていくと、私はそう、ウミガメだったことに気づいた。
ある日、ウミガメになった僕は小さな箱を見つけた。
せめて、これが自分のアイデンティティを示す何かであってくれれば。そう思って箱を開けてみた。
そろそろこの箱も開ける時期が来たかな。俺は缶切りを探した。しかし、無人島だから缶切りがあるわけもない。これ、開ける流れだったけど、全然開けられないじゃねえか! そしたら、空から缶切りが降ってきた。
だんだん不安になってきた。この缶切りでこの箱を開けるという流れだが、僕には手があっただろうか。
やがて、自分のヒレだったと思っていたものが手に変わってきた。ここはもしかしたら仮想世界なのかもしれない。自分が思った通りに世界は変わっていく。
どこまでも、どこまでも、果てしない空、夢は終わらない~て、おい! 学習塾になっちまったじゃねえか! なんで俺、学生服着てるんだよ!
だからこそ……だからこそ……だからこそ、だからこそだからこそ! 学生服を着てるんだよ!
だからこそ、今この姿だからこそ、やることがあるのではないか。僕は気合を出して一歩踏み出した。
言い換えると、それは受験勉強だった。
というのも、今までの100年の話だったり、仮想空間っていうのは全部嘘で、それは僕が受験勉強から逃げるための妄想だったんだ。外からお母さんの声が聞こえる。
「あんた! まだ勉強やってないの!」
空には、星が輝いているように見えた。ただそれも僕の願望なのかもしれない。
「さあ、受験勉強をするのよ!」
そう後ろから声が聞こえた。振り返ると天使がいた。
そもそも、天使っていうのは本当にいるのか。
「そんなもんいるわけねえだろ」。
左を向くと悪魔がいた。
いつもそうだ。僕は、僕にとっていいことだけ起きるということはなく、常に何かと比較して、二つのものから何かを選ばなくてはいけない。
そういう選択の時が、いつも僕を苦しめるんだ。
いつの間にか、悪魔と天使と、あともう一人。中庸の人がいた。
「私は君の弟だ」。
「え? あなたは弟だったんですか」。
いっそ兄であってほしかった。
具体的には、3歳上の年で離れた兄であればよかった、と思った。
一方その頃、天使と悪魔は密かにお母さんの元へ向かっていた。
「あいつ、兄貴と一緒に……兄貴じゃねえ。弟と一緒に遊んでますぜ」。
「そんなことやってるの?」
「いや、そんなことやってないわよ」。
悪魔と天使が喧嘩をしている間に、お母さんはどしどしと階段を登って部屋に近づいてくる。
「まだそんなことやってるの、早く勉強しなさい!」
一方で、中庸の人と僕はずっと受験勉強をしていた。
「きっと、お母さんは怒鳴ってくると思う。『まだそんなことをやってるの!』って。『へへーん、やってますよーだ。受験勉強をね!』と言ってやれよ」。弟から。そう、中庸の人から言われて、俺は受験勉強をずっとやっていた。
もちろん、それは母を欺くためだけのもののはずだった。しかしその中庸の弟に刺激され、ひとたび勉強を始めてみたところ、僕はそこから変わることができた。
せっかく勉強を始めたのなら色々やりたくなってきた。数学から始めて英語まで進めた。
「個人的には、ドイツ語も学びたかったな。俺。そういえば医者になりたかったんだ」。
中庸の人がそう言った。
「お前、ドイツ語を学びたかったんだ。お前、がんばれよ。俺、英語をがんばるからさ」。
二人でドイツ語と英語の勉強を始めた。
ちなみに、僕は何故、学生になったかを思い出した。そうだ。僕はかつてウミガメだったことがある。
そこで思い出した。私の前世はウミガメだったのだ。
しかし、私がウミガメから人間になったのには、理由がある。
中庸の人が缶切りで玉手箱を開けて、もくもく煙が立って、俺は人間にされてしまったんだ。あ! 中庸のやつが悪いんじゃん!
いやしかし、中庸のやつ、いつの間にかいなくなっている。どこ行っちまったんだ。
きっと、僕の人生にとってあいつがキーマンに違いない。僕はあの人の姿をくまなく探した。
少なくとも、徒歩15分圏内のところは、全て探した。
でも、見つからなかった。それはそうだ。徒歩15分圏内って、松戸駅からちょっと商店街行ったぐらいのところだ。そんなとこにいるわけがないと思った。
「ふん、甘いな」
「えっ」。
後ろから何かが聞こえる。振り返るとそれは、ウミガメだった。
そこへ、天から声が降り注いできた。この声は、もしかして……。
その頃、お母さんは夕食を作っていた。
「そろそろ帰ってこないと、冷めちゃうな」。
そう言って、日が暮れていく。
あとがき
どてらい:後編へ続く!
さか:続く⁉ ちょっともう苦手だわ!
どてらい:話が何も進まなかったですね。
さか:進まなかったし、なんかもう、とっちらかってて。「中庸ってなんだろう」って、ずっと。
どてらい:中庸な人がキーマンになっちゃってるんで、今。
さか:中庸な人って、なんなんですかね……。
ハマナカ:善と悪と、その中間っていう意味での。
どてらい:謎は残ってるんですよね。天使と悪魔は喧嘩していて、お母さんが怒って部屋に行こうとしていたんだけど、結局、今はお母さんは料理を作って日が暮れているんですよ。その間に、お母さんと天使と悪魔はどういう動きをしていたのかっていうのは、まだ読者から見えていない。
さか:中庸な人はいない?
どてらい:中庸な人は逃げて、いなくなってる。主人公は閉じ込められてたのか、ウミガメだったのか、人間だったのかゼリーウミだったのかがわからない。
さか:なんてことだ。
どてらい:何もわからない状態で後半に続く。
さか:どうしよう。
どてらい:ここから怒涛の伏線回収をしていかなきゃ。ワンピースもびっくりの伏線回収をしていかなければなりません。
ハマナカ:できるのかな。
さか:できるのかな。
ハマナカ:もうちょっとこう、みんなで協力して一つの物語を。
どてらい:そうですね。まあまあまあ、ここからちょっと話が動いていくんじゃないですか。起承転結の承と結ぐらいな感じで。
ハマナカ:本当かな。
さか:本当かな。
どてらい:みんな頑張ろうぜ。協力して頑張ろうぜ。
さかさん、中庸の人っていうのが、あまり意味わかってなかった感じ?
さか:ずっとイメージが湧かなくて。インド系の方を思い浮かべて……。
どてらい:それ、中東の人ですね。中庸の人が出てきてから、さかさんが調子悪くなっている。何に迷っているのか。中庸の人が想像できていなかった?
さか:そうなんです。イメージでは、ずっとインド人みたいな人が、
ハマナカ:それはそれで面白いですけど。
どてらい:すごいですよ。中庸の人のイメージがそういう人になってしまったんですか。
さか:はい、中庸とはって……。
ハマナカ:さかさん泣いてる。 笑い過ぎて。
どてらい:大丈夫ですか。
さか:どうしよう……。
ハマナカ:じゃあ、私で終わったから。次はまたどてらいさんから。
どてらい:いきますね。今、お母さんが夕食を作っているところで終わったわけですね。話はまとまりました。いきます。
後編はこちら!
本日の漠然マイスター
ハマナカ
紙折り人。DJやプログラミングもする。折り紙デザインスタジオ Kamiori-Studioを運営している。漠然スタイルは「神降ろし」。0から1を作ることに没頭しているうち、その身に神を宿す術を習得しつつある。マイスターとしては研究家気質で、他人の漠然感の分析に余念がない。
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どてらい
物書き。空手やたこ焼き職人もする。主に雑誌『散歩の達人』で執筆、トンチキ企画担当。最近、古畑任八郎という人格が発現した。漠然スタイルは「イタコ」。グッと集中すれば他の人格を憑依させられるし一時的な記憶の塗り替えも可能。自分を単なる容れ物と考えているイカれた男。
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さかまさみ
写真家。ガスメーターをこよなく愛するガスメーター大好きお姉さん。焼き魚との対話に悩む繊細な性格。
漠然スタイルは「一期一会」。ファーストコンタクトのインパクトが大きければ大きいほどまっしぐらに走る。まさに「思い込んだら一直線」の瞬間最大風速系マイスター。
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