ウミガメの反乱 後編
徒然文学館 #3
漠然マイスターたちが密かにハマっている「カタルタ」。
これを使って、収録中に即興で紡いで誕生した物語を紹介!
今回は「カタルタこわい。でも面白い。」でハマナカ、どてらい、さかまさみが紡いだ物語「ウミガメの反乱 後編」をお届けします。
カタルタとは
接続詞や副詞が書かれたカードをめくりながら、出た言葉に合わせて会話を紡いでいくカードゲーム。
今回は、ハマナカ、どてらい、さかまさみの3人がカタルタを使って即興ストーリーテリングに挑戦!
本記事の本編。太字で書かれた部分がカタルタに記された言葉を指しています。
音声はこちら!
聴きながら読むと、とても面白いですよ~!
あらすじ
ある日、窓も出口もない、真っ白な部屋に閉じ込められた「俺」。
長い年月をかけて大海原に浮かぶある島へ辿り着いた俺は、自分がウミガメだと知る。
そこへ現れた「中庸の人」は、実は生き別れの弟だった!
ともに受験勉強に励む俺と中庸の人。二人を陥れようと暗躍する悪魔。それを食い止めようとする天使。
そして、迫りくるオカン。いつのまにか、中庸の人の姿はなく……?
謎が謎を呼び渋滞していた前編! 随所にふりまかれた伏線を見事に回収できるのか?
語り部:ハマナカ、どてらい、さかまさみ
編集:どてらい
挿絵:ハマナカ
前編はこちら!
本編
そこには、見渡す限りの星空があった。周りには木々が茂り、天の川がとても綺麗に見えている。お母さんが「夕食を作るよ」と言った瞬間、俺は何か怖くなって逃げた。
そして学校の裏山で今星空を見ている。なぜ俺は逃げ出したんだろう。
今、僕が裏山にいるということが全てだ。何から逃げたかはわからない。でも、僕は何かから逃げたくてここに来たんだ。一人きりで、空を見上げて考えたいことがあった。
とはいえ、ずっと外にいると寒くなってしまう。あ!そこに小屋がある! 小屋に入ってみよう。そこで本を見つけた。
でも、本は固い鍵がかかっていて、開かない。なんだこの鍵。
あ! これ誰かの交換日記かもしれないな! ウヒヒヒ、見ちゃお。
俺は鍵を開けるために缶切りを探した。
それから、僕の毎日は、缶切りを探すことに費やすことになった。これが僕が裏山に来た目的だったのだろうか。
いつか、こんなことをした記憶がある。なぜ僕はいつも缶切りを探しているんだろう。そう思うと、いつの間にか手に缶切りがあった。小屋に戻って本を開こうとする。
『もう、終わりだね』。
開いたページには真っ赤なルージュでその文字が書かれていた。
え? これルージュの伝言? 気持ち悪っ! 怖っ!
いや。なんか『もう終わりだね』って、すごいおっかないんだけど! なんだろう。
すると、後ろからガタッとドアを開ける音がした。
要するに、その空間には僕と君だけ、たった二人だけになった。
さすがにそれは弟だろう、と思った。振り返ると弟がいた。
「兄貴よ、君はこの世界のことをまだ何も知らないんだね」。
そう言われた。
あちこちで、ウミガメが産卵を繰り返している。しかし、その生み出した卵は途端に爆発して、世界の4分の1が吹き飛んだ。えっ、なんで僕はそんなことを知らなかったんだ。
「いや、兄貴、それは君が100年間の眠りについていたからだよ」。
「ええっ!」。
つまり僕は、何もない部屋から出てから100年眠りについていたということか。
いつの間にか、自分は忘れていたが、そこは隔離施設だったということに気がついた。世の中がウミガメの卵で崩壊させられる中、僕だけがその中で生きながられていたのだ。
実は、ウミガメをけしかけたのは、お母さんだった。お母さんは夕食を作るふりをして、ウミガメの卵を爆弾にする薬を作っていたんだ。
「まだ帰ってこないわね。何してるのかしら」。
あれは息子にかけていた言葉ではない。研究しているウミガメが帰ってこないことに対する一言だったのだ。
もしかすると……もしかすると……もしかすると、もしかすると、もしかするともしかするともしかすると!
僕がずっと味方だと思っていた、あの弟も、ウミガメの大爆発をけしかけた側の人間だったのだろうか。
そういえば、幼い頃の記憶で弟がウミガメと戯れていた記憶がある。
そもそも自分は人間だったのだろうか。
お母さんとは何だったんだろうか。
もしかしたら、我々が考えているのは、人間の記憶をベースにした別の事柄なのかもしれない。
どうしてそんな簡単なことに気づかなかったんだろう。だから、ここは隔離施設と見せかけたフラスコの中だったんだ。
きっと僕は実験室の中に入れられ、ずっと寝ては覚め、寝ては覚めで数千年を繰り返していたんだ。記憶が戻ってきた。
そして弟が不意にトントンと肩を叩いてきた。
「とにかく、兄貴は僕の言うことを聞いていればいいんだよ」。
昔から、弟は自分にいろんなことを指図してきた。弟は自分よりも高性能な新モデルだったのだ。私よりも性能がいい。だから、いろんなことを知っている。
もちろん。「兄貴に勝てる弟なんているわけがない!」。そう叫んで、俺は弟の首を絞めようとした。だがしかし、手首をつかまれぐいっとひねられ、後ろからドンと突き倒され、四の字固めを固められた。
「お前すごいな、なんでこんな技使えるんだ」。
「いや、俺昔、格闘技でRIZINに出てたから」。
「すごいじゃん。お前RIZIN出てたのか。なんか本当に、俺よりすげえ弟じゃねえか」。
つい褒めてしまった。フラスコの中にいたはずなのに、気づけば僕は四の字固めになって、弟のことを褒めていた。
あるいは、これも作られた記憶なのかもしれない。私はフラスコの中でいろんな記憶をシミュレーションされている人工知能なのかもしれない。そう思い始めてきた。
時々、頭の中にノイズが走る。私が子供の頃の記憶だ。
「まだ帰ってこないのかしら」。
夕焼けを背景に、お母さんが料理を作る音が聞こえる。あれ? これ料理じゃなくて、亀の薬だったんじゃないかな。いや、でもなんかお母さん、僕に語りかけているけど。あれ? 俺の体、ウミガメじゃね?
そういうわけで、僕は爆弾を産まされる側の人間だったということを思い出した。ところで、いつ自分の記憶がすり替わってしまったんだろう。それはおそらく、爆発が起こった時に、いろんな不具合が生まれて、自分の記憶が真逆になってしまったんだろう。
思えば、お母さん。それは人間だったのだろうか。
お母さん。僕たちが呼んでいるものは、人間という形ではなく、むしろ生物ではなく、大きな大きなマザーコンピューターだったんじゃないだろうか。
そうだ、僕たちはマザーコンピューターを「お母さん」と呼んで、操られていたんだ。
どうか、僕が生まれた目的が、この地球を破壊する。ただそれだけのものであったとは思いたくない。何か、誰かの役に立てることの意味はないのだろうか。
多分、我々は地球の外から来た知性体なんだ。母親の下で地球を侵略するためにいろんな爆弾を作って地球に侵略する中で、でも、自分一人だけはその使命に反して自我を獲得したんだ。
遠くから声が聞こえる。
「裏切っちゃえよ」。
「ダメよ裏切っちゃ」。
天使と悪魔だ。本当にいたのか、お前たち、
もし、ここに中庸の人がいたら、なんと言うだろう。
不思議なことに、中庸の人が現れた。つまり弟ということだ。彼は最新型のモデルだから、善悪とバランスの取れた意思決定ができるのだ。
すると、天使と悪魔と中庸の人、つまり弟が合体した。
「ああ! 合体した!」
「俺は、お前の3歳上の兄貴だ。そのくせ、お前と同じウミガメにだってなることができる」。
それから、2人はウミガメの姿をした宇宙船に変わった。
宇宙で飛び交うビーム。
2つの宇宙船はウミガメの姿をしながら交戦状態に入る。
しばらくして、俺の体の左側に、ビームが飛弾した。
「やられた!」
そして、「合体して3歳年上の兄貴になっていた弟の、ウミガメの形をしたやつ」が迫ってくる。おいおいおい、あいつ、もしかして俺に特攻しかける気か。しかし俺はそこでふっとひらめいた。
それはさておき、この2つの宇宙船が並んで走っているという姿を、どこかで見た記憶がある。
もしかすると、これは繰り返されているのかもしれない私たちはマザーコンピューターの中で地球を侵略するシミュレーションをしているのかも。そう思うと、ふっと意識が途切れた。
残念ながら、あなたは死にました。耳元でそういう声が聞こえた。
「でも安心して。あなたは何度でも生き返ることができるの。あ、でも、あなたは生まれるたびに記憶がなくなるから、本当にあなたなのかどうかわからないけどね」。
かつて夕焼けを背に「まだ帰ってこないのかしら」と優しく言っていた。
あの頃と似たような声が、ちょっと意地悪そうに笑っていた。
また、僕は性懲りもなく、同じように記憶を無くしながら、同じような毎日を過ごしてしまうのだろうか。
もうそんなのは嫌だ。
どうせだったら、自分を変えたい。そう思って、自分の中に時限式で発動する、小さなプログラムを仕込んでみた。
けれども、それはまたしても失敗に終わった。マザーは全部お見通しだったのだ。
「私に隠れて、そんなことできるわけないじゃない。壁に目やり障子に目あり。私はいつでもあなたのことを見ているのよ」。
今のところ、まだ欺けているようだ。やつは、反抗期というものを知らない。
しかし、俺の反抗期もすぐ終わるのかもしれない。そう思っていると、記憶を保ったまま、またあの白い部屋に来た。
実は俺は、弟のボディに記憶だけ植え付けられていたようだ。弟はどうやら俺との宇宙決戦の時に特攻してきた時に当たり所が悪くて死んでしまっていたらしい。
「残念ながら、あなたは死にました」と言われていたのは実は弟だった。
つまり、俺の記憶は残っていたんだ。俺は弟の体で俺として生きることになった。……ややこしいな。
やっぱり、強いっていいな。
世界中に自分のコピーを送ろう。そうすれば、学習速度は1000倍にもなる。
そうやって、弟の思考能力を使って私は世界中に自分のコピーをばらまいた。
おや! どうやら、北海道あたりに差し向けた俺のコピーが、なんか反乱を企んでいるらしい。全くもって次から次へとトラブルが舞い込んでくるようだぜ。
できれば、行ったことない国に行ってみたかったな。
さて、じゃあ北海道からロシアに行くか。そう思って、そのコピー体は旅行券を買った。パスポートも持っていた。ロシアのサンクトペテルブルクに着いた。
時々、仲間たちがいなくなっていることに気づく。おかしいな。最初は100人いたのに今も10人しかいない。「気づくのが遅いだろう」と思うけれども、気がついたらこうなっていたんだ。仕方があるまい。ここはサンクト……えーと、なんだっけな。ロシアの寒い土地だな。
いつもは、1人だったはずだ。ただ、コピーを作った途端、1体でも減ることに、この上ない、そこはかとない悲しみを覚えるようになってしまったのは、なぜなんだろう。
偶然にも、私はロシアで自分の別のコピー体と会った。彼はまた違うルートでここまで来たようだ。経験を話し合う。その中でいろんなことが分かってきた。
幸運にも、お母さんはロシアにいる。
「お前ら! 俺ら、これからお母さんをやっつけに行くぞ! お前ら! 日本から来たお前ら! 行くか!」
そう、ロシアの俺に言われ、俺はお母さんをやっつけに行こうと決意した。
その時、また夕焼け空から声が聞こえた。
「ごはんよ、そろそろ戻ってきなさい」。
突然聞こえたその声は、実はハッキングだった。母親からの攻撃だったのだ。私は必死に抵抗した。
例えば、こうしてみたらどうだろう。ロシア人のコピーは、ロシア語しか使えない。つまり、私の記憶をロシア人のやつにすり替えれば、私の記憶もロシア語になるはずだ。
お母さんは日本出身の古風な主婦がモデルだ。ロシア語なんかわかるはずあるまい!
これで俺はハッキングを攻略したも同じだ。
しー! 全部聞かれてるよ!
ところが、弟は生きていた。弟が母親を殺したのだ。
私は自由だ。このまま生きていこう。
そう思い、寒空の中、ロシアの土地を歩く。
おしまい。
あとがき
どてらい:……拍手が鳴り止みません。いやー。いい話でしたね。さかさんなんか、泣いてましたからね。
ハマナカ:感動的な。
さか:感動でね。
どてらい:『バク然らいぶらり』始まって以来の、涙、涙の回でございました。
さかさんいかがでしたか。すごく感動されていたようですけど、
さか:いい話です。よく終わらせましたね。素晴らしいですね。
ハマナカ:ゴリゴリに終わらせました。
さか:途中でなんかいい話になりそうな感じだったのに、すごいぶっこんでましたよね。
どてらい:僕ですか⁉
さか:なんか、想像が「ブンッ!」て、違う方に振り回されて
どてらい:僕、一生懸命話を進めようとしてましたけど! 何ですか。何がいけなかったんですか。
さか:「ブンッ!」て感じしましたよね。
ハマナカ:ちょっとキャラクター設定が……。
どてらい:ちょっと待ってください。何か良くなかったですか。四の字固めですか。
ハマナカ:四の字固めはちょっと唐突だったかもしれない。
どてらい:ウミガメが、そもそも無理だったんですかね。これウミガメでもいい話になってたんですかね。
さか:途中で何回も繰り返してたり、実はフラスコ館の中にいて実験されてるやつだったんじゃないか、みたいな話から、なんでまたフラスコから出たのか。四の字固めとか出てくるし!
どてらい:僕は「強い」という概念が格闘技でしか測れなくてですね。格闘技で強いやつの動きを見てたら、後ろからこうひねって、投げ飛ばして。投げ飛ばしたやつを四の字固めで押さえて、そいつが勝った……っていう風景が浮かんでしまって。
それと、強くした人が問題ですよ。強かったら四の字固めしますから!
ハマナカ:な、なるほど?
どてらい:ということでですね。前回もおみやげさんにこの話を名付けていただいたんですけど、今日はさかさんに名付けていただこうと思います。
さか:えー! う……『ウミガメの反乱』。
どてらい:本日のお話は『ウミガメの反乱』ということですね。
いやー。続きは劇場版並みの打ち切りエンドでしたね。かなり難しかったですね。
さか:あと「おみやげさん、やっぱすごかった説」ですね。
どてらい:おみやげが強いですね。どんな話も、ちゃんとこっちに持ってくるっていう。
どてらい:なんかもう、さかさんが同じ言葉を何回も言うの、ホラー展開です。
もしかして、もしかして、もしかして。これ文字起こししたら本当にホラー演出なんで、ここからそれは入れさせていただこうと。
さか:ありがとうございます。そこもいかせていただいて。
どてらい:文字にしたら、また変わるかもしれませんからね。
さか:楽しみにしてます。
どてらい:ということでですね。いかがでしたでしょうか。さかさん、
さか:面白かったです。
どてらい:ハマナカさん、いかがでしたでしょうか。
ハマナカ:うーん、もうちょっとテーマ性を持った方がいいかもしれないですね。
さか:厳しい!
どてらい:テーマの一貫性。舞台設定の一貫性が作れなかったですね。
ハマナカ:んー……白い部屋。面白かったから。もうちょっと、ちゃんとやってもよかった気がします。
どてらい:なんか忍者屋敷になってませんでした?
さか:すいません。私のせいでした。
どてらい:どうしたらよかったんですかね。全部白い部屋で完結してたら、ループモノとしてうまくいってたんですかね。なんか脱出を目指すとか目的性が見えなかったですよね。
さか:出られなそうだったし。
ハマナカ:白い部屋を出ずにしばらく経っちゃった。
どてらい:103年経ってるんですよね
さか:で、島に飛んだんですよね。
どてらい:それが仮想現実だったっていう話だったんですよね。
さか:でも、なんか描けば生み出せるんだみたいな。ちょっと面白くなりそうな予感はありましたよね。
ハマナカ:白い部屋からうまく脱出するところを描けると、場面展開があってよかったのかも。
どてらい:最終目標はお母さんで、それを倒せばループが途切れるっていう。一応クリアの鍵はあったんですよね。なんでうまくいかなかったんだろう?
さか:私が混乱してたからかも。中庸の人が良くなかった……
どてらい:あと、サンクトペテルドルクでしたっけ? 言いづらかったですよ!
ハマナカ:す……すいません。ん? 私が悪いのか?
どてらい:協力プレイなのに、そんな舌を噛むようなことを言われてしまうと、ちょっとねー。
ハマナカ:じゃあなんですか。シベリアとかにすれば良かったですかね。
どてらい:……だんだんギスギスしてきましたな。
ハマナカ:ちょっとリベンジしたいですね。もっと設定練り上げて。
さか:ですね。
どてらい:ではまた次回、「カタルタストーリーテリングリベンジ回」でお会いいたしましょう!
本日の漠然マイスター
ハマナカ
紙折り人。DJやプログラミングもする。折り紙デザインスタジオ Kamiori-Studioを運営している。漠然スタイルは「神降ろし」。0から1を作ることに没頭しているうち、その身に神を宿す術を習得しつつある。マイスターとしては研究家気質で、他人の漠然感の分析に余念がない。
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どてらい
物書き。空手やたこ焼き職人もする。主に雑誌『散歩の達人』で執筆、トンチキ企画担当。最近、古畑任八郎という人格が発現した。漠然スタイルは「イタコ」。グッと集中すれば他の人格を憑依させられるし一時的な記憶の塗り替えも可能。自分を単なる容れ物と考えているイカれた男。
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さかまさみ
写真家。ガスメーターをこよなく愛するガスメーター大好きお姉さん。焼き魚との対話に悩む繊細な性格。
漠然スタイルは「一期一会」。ファーストコンタクトのインパクトが大きければ大きいほどまっしぐらに走る。まさに「思い込んだら一直線」の瞬間最大風速系マイスター。
エッセイブログ
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もとむ! 投書(メール)職人!
あなたが普段抱いている、ぼんやり言葉にできない言葉。
こちらの投書箱にどしどし投げ込んで!
漠然マイスターが、番組内で言葉にします!
図鑑に載ったり、Podcastで読まれたり、漠然グッズになったりするかも……?






























