今回は番外編!
人気SF映画『プロジェクト・ヘイルメアリー』を観てきたハマナカ、どてらい、さかまさみ。
未知の原因によって太陽エネルギーが奪われ、地球が氷河期へ向かっていくなか、人類最後の賭けに宇宙へと旅立つことを余儀なくされた科学者グレイス。
宇宙船で目覚めたグレイス、失われた記憶、太陽と金星のあいだに伸びる謎の赤い線「ペトロバライン」、そして宇宙で出会う小さな相棒ロッキー。
SF映画に馴染みの薄いどてらいとさかまさみ、原作小説を読み込んだハマナカが、映画と小説の違い、ロッキーとのコミュニケーション、AIヘイルメアリー号、SF映画としての見やすさ、そして異星人との平和的ファーストコンタクトについて語っていく。
今日もお聴き流しください。
※今回は映画・小説の内容に触れるネタバレありの感想回です。
要約
00:00:00 今さらだが、プロジェクト・ヘイルメアリーとは?
今回は、ハマナカ、どてらい、さかまさみの3人で映画『プロジェクト・ヘイルメアリー』を観てきた感想回。太陽エネルギーが奪われ、地球が氷河期へ向かう危機の中、科学者グレイスが宇宙で人類を救うために奮闘するSF作品について語っていく。冒頭からネタバレありで進むことを宣言しつつ、映画を観た直後の熱量で、面白かったところ、気になったところ、小説版との違いを掘り下げていく。
00:01:38 映画と小説の描写の違い
原作小説を読んでいるハマナカが、映画と小説の基本構造を解説。主人公グレイスが宇宙船で目覚め、自分がなぜそこにいるのかを思い出しながら、地球の危機と自分の使命を理解していく流れは共通している。天文学者ペトロバ博士が発見した「ペトロバライン」、太陽エネルギーの減少、金星近くで採取されたサンプル、そしてアストロファージの存在。映画ではかなり整理されているが、物語の芯は原作と同じ方向に進んでいる。
00:06:35 宇宙で出会う小さな相棒ロッキー
グレイスがタウセチへ向かい、そこで出会うのが岩のような異星生命体ロッキー。最初は言葉も文化も環境も違う相手だが、物や数字、科学的な概念を使いながら少しずつ意思疎通を図っていく。映画ではロッキーの動きや反応がややコミカルかつハートフルに描かれ、さかまさみも「とにかくロッキーがかわいかった」と感想を語る。小説版では生態や惑星環境がより詳細に描かれており、水ベースの生命体であることや、視覚ではなく聴覚で世界を把握していることなども掘り下げられている。
00:10:00 どう見せる? 科学描写の説得力
小説版では、グレイスが自分のいる場所を宇宙船だと気づくまでの過程や、アストロファージの性質を調べる実験、重力や船内環境の違いなどが丁寧に描かれる。一方、映画版ではそれらの細かな科学的謎解きはかなり省略され、視覚的にわかりやすく見せる方向に整理されている。小説はSFファン向けの論理的な楽しさがあり、映画は初見でも追いやすい映像体験として成立している。ハマナカは、小説を読んでから映画を見ると省略や変換の仕方が面白いと語る。
00:20:00 SF映画版は、初心者にも届く親切設計
どてらいとさかまさみは、ガチガチのSFに詳しいわけではない立場から、映画がかなり見やすかったと語る。専門的な設定はあるが、映画は説明しすぎず、必要なことは映像で伝えるバランスになっていた。どてらいはロッキーの船内を見たいという欲求に強く反応し、小説版では描かれないロッキーの船内シーンが映画ならではのご褒美だったと感じる。科学的な厳密さよりも「見たいものを見せる」映画の強さが、ここで浮かび上がる。
00:30:09 ヘイルメアリー号に見る「現代っぽさ」
映画版では、宇宙船ヘイルメアリー号のAIがかなり会話的に描かれている。どてらいは、こちらが困っているのに「その指示では動けません」と返してくる感じに、現代のAIっぽさを感じる。一方、ハマナカによれば、小説版では宇宙船はあまり喋らず、もっと機械的な存在として描かれている。映画が公開される時代にはAIが身近になっているため、映画版ではAIが現代の観客にとって受け入れやすい存在へ調整されているように見える。ロッキーが「生き物」として感じられる対比も効いている。
00:40:01 映像を小説で補完する
原作小説には、映画では省略された細かい設定やエピソードが多くある。アストロファージの培養、サハラ砂漠への設置、気候変動対策として南極の氷を溶かす話、ロッキーの星エリドの環境、ロッキーの船、アストロファージを食べるタウメーバなど、世界観はかなり濃い。映画はそれらをすべて描くのではなく、複数のイベントをまとめたり、役割を整理したりして、2時間半の物語として成立させている。原作の情報量を知るほど、映画の圧縮のうまさも見えてくる。
00:48:29 平和的ファーストコンタクト
異星人とのファーストコンタクトというと、攻撃や侵略、恐怖の描写になりがちだが、本作ではロッキーとのコミュニケーションが平和的に描かれる。数字、原子、物の形といった共通言語を探しながら、互いの知性を確認していく過程が面白い。ハマナカは、近年のSFでは殺伐とした異星人像も多い中で、こうした協力型のファーストコンタクトが新鮮だと語る。どてらいは、ロッキーが2回目に物をゆっくり投げてくる描写に、相手への理解と優しさを感じる。
00:58:49 ビートル号とビートルズ
映画終盤に登場する「ビートル号」とビートルズ楽曲の使用についても話が及ぶ。小説版では、ビートルズ好きの研究者が関わっているため、ビートル号の名前や機体名にも意味があるという。映画を観ただけでも気づける小ネタと、原作を読んでいるからこそわかる小ネタが重なり、細部へのこだわりが作品の楽しさを増している。どてらいは、映画内にニコンらしき一眼レフカメラが映ったことにも反応し、宇宙と光学機器のリアリティにうれしくなる。
01:01:48 SFのトビラが開いた日
『プロジェクト・ヘイルメアリー』をきっかけに、どてらいもさかまさみもSFへの興味が少し開いていく。ハマナカは、日本のSF作家・小川一水の作品をおすすめし、読みやすく、科学的な考証もしっかりした作品があると紹介する。映画はSF初心者にも入りやすく、原作小説を読むとさらに世界観が深まる。最後は、映画を観た人、小説を読んだ人からの感想投書も募集しながら、プロジェクト・ヘイルメアリー感想会は終了する。
漠然なる気付き
『プロジェクト・ヘイルメアリー』は、SF初心者にも届く入口の作り方がうまい。設定はかなり濃いのに、映画では必要な情報だけを映像と会話で整理している。
小説と映画では求められる快感が違う。小説は科学的な謎解きや設定の納得感、映画は見たいものを見せる映像の気持ちよさが大事になる。
ロッキーはかわいい。これはかなり重要。未知の生命体でありながら、動き、反応、言葉の覚え方、相手を理解しようとする姿勢で、ちゃんと相棒として好きになれる。
異星人とのコミュニケーションが「攻撃」ではなく「協力」から始まるのが良い。数字、原子、物の形を使って少しずつ通じ合う過程は、かなりワクワクする。
映画版のAIヘイルメアリー号は現代っぽい。便利だけど融通がきかない感じ、命令の解釈が杓子定規な感じに、今のAIとの距離感がにじんでいる。
ロッキーが2回目に物をゆっくり投げる描写は小さいけれど大きい。相手の身体性や限界を理解し、速度を変えること。それだけで優しさが伝わる。
原作小説には、映画に入り切らなかった科学的な世界観がかなり詰まっている。映画を観たあとに小説を読むと、「あの裏にはそんな理屈があったのか」と楽しめそう。
グレイスとロッキー、グレイスとカールの関係は、恋愛ではなくバディとして描かれている。友情や相棒感で物語を引っ張るところに、かなり少年漫画的な熱さがある。
ビートル号やニコンらしきカメラなど、細部の小ネタに気づくと映画はさらに楽しい。SFは設定だけでなく、道具や名前にも物語が仕込まれている。
第34.5回は、映画感想回でありながら、SFの楽しみ方そのものを話す回になった。初見で楽しむ人、原作で掘る人、細部を拾う人。それぞれの見方が重なって、作品が立体的になる。
本日の漠然マイスター
ハマナカ
紙折り人。DJやプログラミングもする。折り紙デザインスタジオ Kamiori-Studioを運営している。漠然スタイルは「神降ろし」。0から1を作ることに没頭しているうち、その身に神を宿す術を習得しつつある。マイスターとしては研究家気質で、他人の漠然感の分析に余念がない。
どてらい
物書き。空手やたこ焼き職人もする。主に雑誌『散歩の達人』で執筆、トンチキ企画担当。最近、古畑任八郎という人格が発現した。漠然スタイルは「イタコ」。グッと集中すれば他の人格を憑依させられるし一時的な記憶の塗り替えも可能。自分を単なる容れ物と考えているイカれた男。
さかまさみ
写真家。ガスメーターをこよなく愛するガスメーター大好きお姉さん。焼き魚との対話に悩む繊細な性格。
漠然スタイルは「一期一会」。ファーストコンタクトのインパクトが大きければ大きいほどまっしぐらに走る。まさに「思い込んだら一直線」の瞬間最大風速系マイスター。
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